災害時乳児栄養情報(栄養委員会)
地震発生直後は、多くの地域で粉ミルクが足りないという事態が発生し、粉ミルクが入手困難な場合に、代わりにどのようなものを与えたらよいかという問い合わせをいただきました。
そこで、日本小児保健協会栄養委員会では、こういった災害時の乳幼児栄養の対応について、情報提供することといたしました。
なお、すでに地震発生から日数が経過しており、ほとんどの地域で粉ミルクの入手が可能になっていると思います。そこで、このページでは、
①母乳栄養の場合、②粉ミルク利用の場合、③粉ミルクの入手困難な状況
の3点について留意点をまとめましたので、ご参考になさってください。
①母乳栄養の場合
母乳の場合、ストレスがあって母乳の出が悪くなっても吸わせ続けるとほとんどの場合分泌量はもとに戻りますから、頻繁に飲ませてください。避難所などでは、安心して授乳できる空間を確保してあげてください。
②粉ミルク利用の場合
粉ミルクを使うときは乳首や哺乳瓶を消毒するか、清潔な水で洗います。これができないときは清潔なコップで飲ませることなどが勧められています。
(母乳育児団体連絡協議会作成ガイドライン<http://www.midwife.or.jp/pdf/hisai_message04.pdf>)
先進国では、災害地に粉ミルクを送るときは紙コップも同時に送ることも勧められています。((新)日本周産期・新生児医学会 先進国における災害時の乳児栄養 特に粉ミルク配布時の注意点について(2010,3/17, 2011/04/3改訂)<https://www.jspnm.com/topics/data/topics110405b.pdf>)。
③粉ミルクの入手困難な状況
水が使用できて調理可能な状況で、粉ミルクに代わってどのようなものが与えられるかについてですが、良質な粉ミルクが十分に出回っていなかった頃与えられていた代用物が参考になるかも知れません。昭和49年に出版された書物(小児の治療保健指針改定第7版,診断と治療社)には、牛乳を3分の2に希釈し月齢に応じた濃度でショ糖や穀物の粉を加えるとしています。米粉などはむしろ手に入りにくいので、重湯などを加えることになるかも知れません。震災時支援体験保健従事者の話をまとめると、米アレルギーの心配はあるものの、粉ミルクの代わりとしては重湯が良く使われ、また蒸してつぶした芋を与えるなど、いろいろな工夫があるとのことです。
日本は先進国で保護者の衛生観念も高く、小さい子どもに食物を与える際の清潔の必要性は理解されていることが多いですが、災害時の乳幼児の食事に関してはやはり清潔と感染予防が基本です。途上国も含めたグローバルレベルのマニュアルにその基本が抑えられていますので、確認の助けとしてください(災害栄養ネットワークガイドライン日本語版(<https://www.ennonline.net/operationalguidance-v3-2017>)に記載されている Ops Guidance on IFE v3 Japanese からダウンロード可能。))