公益社団法人 日本小児保健協会

協会からのお知らせ

予防接種要望書

  1. 日本脳炎
  2. Hib
  3. 麻疹および風疹
  4. 水痘

1.日本脳炎

厚生労働省健康局
結核感染症 課長 殿
社)日本小児保健協会
会長 村上 睦美
同 予防接種委員会
委員長 加藤 達夫




日本脳炎予防接種第3期の廃止についての要望書

 近年、わが国における日本脳炎患者は、主として50歳以上の中高年齢者が多く小児患者はきわめて少なくなりました。この要因は、これまで広く行なわれてきた小児への日本脳炎予防接種や環境改善によりウイルスを保有した蚊の吸血を受ける機会が激減したなどが考えられています。
  しかし、日本脳炎は発症した場合重症化することが多い疾患でもあります。このような状況下で、第3期予防接種の接種率は40〜50%と推定されています。多数の第3期予防接種の未接種者が存在しているにもかかわらず、10歳代の発症者は過去22年間で1名のみと、きわめて少ないのが現状です。また、全国の年齢別抗体保有調査では、接種率が低いこともありますが、第3期予防接種による追加免疫効果は確認できていないことから、第3期予防接種の効果を積極的に肯定する根拠に乏しいと考えらます。
  当協会としては、患者発生状況や低い接種率を勘案した場合、現行の第1期、第2期の接種が確実に行われることが担保されるなら、第3期の廃止はやむを得ないとする意見に基本的に賛成するものであります。

第3期予防接種廃止に伴う今後の対策としては、
(1)患者発生数が増加した場合、当該地域に臨時予防接種制度の適用を積極的に考慮していただくことを要望いたします。
(2)今回の「定期の予防接種における積極的勧奨の差し控えについて」の勧告により、接種できずに対象年齢を超過した者に対しての経過措置の配慮もお願いいたします。
(3)現在申請が提出されているVero細胞化日本脳炎ワクチンの早期の承認も併せて要望いたします。

以上、小児保健協会は我が国における重要な課題である日本脳炎対策の一環として、上記の3点を実施にあたっての考え方として加えることを要望します。



2.Hib

厚生労働省医薬食品局長
阿曽沼 慎司 殿
社)日本小児保健協会
会長 村上 睦美
同 予防接種委員会
委員長 加藤 達夫




インフルエンザ菌b型(Hib)ワクチンの早期承認に関する要望書

 日本小児保健協会はわが国の小児保健に関する指導および研究を行い、小児保健思想の普及をはかり、もって小児の健康を増進することを目的としています。会員数は5,000名を超え、医師が約60%、保健師・看護師が約40%の割合となっています。当協会は、従来より予防医学の重要性を理解し、安心して予防接種ができる体制の整備や普及に取り組んでまいりました。
  Hib感染症は小児にとって国内外において比較的発生数の多い小児感染症の一つであり、中でもHib髄膜炎および敗血症は重篤な疾患として小児の健康上大きな問題であります。しかし本感染症は海外においてワクチンが開発実用化されており、ワクチンによる予防可能な疾患となってきております。諸外国においてはHibワクチンを導入する国が増加しており、導入した国ではHib感染症は稀な疾患となってきております。

  一方、わが国ではHibに関する疫学データーが整い、ワクチンに関する治験も終了しているにもかかわらず、未だHibワクチンが使用できない状況にあり、毎年5歳未満人口10万人あたり少なくとも8.6〜8.9人、すなわち年間500人以上の子どもたちが自然感染としてのHib髄膜炎に罹患しています。抗菌剤による治療にもかかわらず、これらの患児のうち約5%(毎年25人以上)が死亡し、約25%(毎年125人以上)に永続的な神経学的後遺症が残っております。Hib髄膜炎は一度罹患すると予後不良の経過をとる割合が高く、抗菌剤が有効であっても発症後の治療には限界があり、罹患前の予防の重要性が強調されるところです。近年では、β-ラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性インフルエンザ菌(BLNAR)の増加により、抗菌剤に対するHibの耐性化が急速に進展しており、Hib感染症が更に難治化しする傾向にもあります。また、Hibは飛沫感染により伝播することから、早期保育など乳幼児における集団生活機会の増加により、小児がHib感染症に遭遇する危険性は更に高くなることも予想されております。

  このようなHib髄膜炎の現況を鑑みますと、小児の健康を守る立場として、当協会はHibワクチンによる感染予防が我が国においても可能となる時が一刻も早く来ることを強く望んでおります。
 
  Hibワクチンは1980年代後半から海外において広く使われ始め、既に約20年間の使用実績があります。WHOは本ワクチンの有効性と安全性を高く評価し、1998年に世界中の全ての国に対してHibワクチンを定期接種に組み込むことを推奨しております。その結果、1998年以降、世界各国おいて定期接種化が進み、現在ではアジアやアフリカの国々を含む100カ国以上で広く使用されております。またHibワクチンを導入した国々では、明らかにHib感染症が激減しております。海外での長年にわたる、そして多くの国々での使用実績、および国内での治験成績から、Hibワクチンの有効性と安全性は現在国内外で使用されているワクチンと比較して遜色のないことが明らかであり、当協会はHibワクチンを安全で優れたワクチンであると評価しております。
  しかしながら、我が国においてワクチン関連企業により使用認可に関する申請が国に対してなされてから既に2年以上が経過しているにもかかわらず、その理由が明確ではないまま審査が遅々として進んでいない状況にあると聞き及んでおります。エンドトキシンが極めて微量含まれていること、BSEに関する諸問題に関しても熟知しておりますが、Hib感染症が日本に住む小児に与えている少なからぬ健康障害の存在、WHOによるHibワクチン定期接種化の推奨、海外における同ワクチンの使用実績および国内治験成績などから、わが国においても小児に対してHibワクチンが速やかに使用出来るようになる事は、小児の健康を守ろうとする当協会の強い願いであります。一方このままの状態が続き本ワクチンの使用機会を逃すことが今後もさらに続くようでは、新たな社会問題となることも危惧されます。

  わが国においてHib感染による健康被害がこれ以上存続しないよう、そして欧米各国はもとよりアジア・アフリカ諸国の中においてHibワクチンの使用が承認されていない国は少なく我が国はその数少ない国の一つであるという点も考えあわせ、Hibワクチンの導入に向けて迅速な審査が執り行われることをここに改めて要望する次第であります。



3.麻疹および風疹

厚生労働省健康局
結核感染症 課長 殿
社)日本小児保健協会
会長 村上 睦美
同 予防接種委員会
委員長 加藤 達夫




麻しん及び風しん定期予防接種の2回接種の導入についての見解

 感染症発生動向調査によれば、過去10 年間には年間約1〜3万人の麻しん患者が報告されてきましたが、平成15 年は8,285 件、平成16 年は1,554 件(暫定値)と、麻しん患者報告数は減少傾向にあります。しかし、麻しんEliminationが達成された米国等と比較すれば、依然として、数多くの患者が発生している状況にあります。このため、今後も麻しん予防接種の一層の推進に各関係機関、関係者が努力すべきであります。一方、患者数減少に伴い、今後、野生ウイルスによるブースター効果が弱まり予防接種によって付与された免疫力の低下が予測されること及び接種率の増加に伴ってprimary vaccine failure も蓄積されることから、複数回接種の導入を図る段階に達していると考えられます。
  風しん予防接種は、風しん流行を阻止し、妊婦感染を防ぐという考え方に基づき、「生後12 月から生後90 月に至るまでの間にある者」を対象に接種が行われています。経過措置として、昭和54 年4月2日から昭和62 年10 月1日生まれの者は、平成15 年9月30 日までは定期予防接種の対象とされました。しかし、経過措置対象者を中心に若年成人の間で風しん抗体を持たない者が少なからず存在しており、風しんが流行した場合に先天性風しん症候群の発生が懸念されています。平成16 年には先天性風しん症候群が年間10 例報告され、風しん対策の強化が求められています。先天性風しん症候群の発生阻止のためには、流行の発生を阻止すること、すなわち風しんウイルスの排除が不可欠です。麻しんと同様、わが国においても風しん排除を目標として対策の強化を図るべきであり、このため、風しん予防接種の2回接種を導入し、より強固な集団免疫の獲得を目指す必要があると考えられます。

当協会としては、
(1)麻しんおよび風しんワクチンの接種においては、予防接種法施行令で定める対象者は、12か月から90か月の間とし、この間に2回接種することとする。ただし、1回目と2回目の接種間隔は、諸外国の勧告を参考にして少なくとも3年とする。
(2)定期の予防接種実施要領で定める標準的な接種期間は、1回目は12か月から15か月、2回目は6歳とする。
(3)接種にあたっては、1)現在承認申請中の麻しん・風しん混合(MR)ワクチンを2回接種、2)麻しんワクチンと風しんワクチンを同時に接種、3)麻しんワクチン接種後27日以上あけて風しんワクチンを接種する などの方法が考えられる。

以上、小児保健協会は我が国における重要な課題である麻しん、風しん対策の一環として、上記の3点を実施にあたっての考え方として加えることを要望いたします。


厚生労働省健康局結核感染症課
課長 牛尾 殿
社)日本小児保健協会
会長 村上 睦美
同 予防接種委員会
委員長 加藤 達夫




麻疹及び風疹定期予防接種の2回接種の導入及び
その接種スケジュールについての要望 (変更)

     既に当協会は上記要望書を提出したところでありますが、諸般の事情よりその要望書の一部を変更いたしますので提出いたします。
 
     麻疹及び風疹ワクチンの接種においては、予防接種法施行令で定める対象者は、1期月齢12ヶ月から36ヶ月(3歳時健診時の年齢)にするまで、2期は月齢60ヶ月から90ヶ月に達するまでとし、1期は12ヶ月から15ヶ月の間に、2期は就学6ヵ月前から就学に至るまでを標準接種年齢とする。
        以上であります。他は変更ありません。



4.水痘 

厚生労働省健康局
結核感染症課長
牛尾 光宏 殿
社)日本小児保健協会
会長 村上 睦美
同 予防接種委員会
委員長 加藤 達夫




水痘を定期予防接種の対象にすることに関する要望

 日本小児保健協会は我が国の小児保健に関する指導及び研究を行い、小児保健思想の普及をはかり、もって小児の健康を増進することを目的としています。その活動の一環として、安心して予防接種ができる体制の整備や普及に取り組んでまいりました。
  現在、水痘については予防接種法に基づく定期予防接種の対象とされておりませんが、下記の理由により、できるだけ早期に予防接種法に基づく予防接種とされるよう、強く要望いたします。

  1. 重症水痘が予防可能になること
     水痘は水痘帯状疱疹ウイルスによる疾患であるが、感染症発生動向調査では毎年25万人前後の患者が報告されている。
      また、平成16年度厚生科学研究補助金(新興・再興感染症研究事業)「水痘、流行性耳下腺炎、肺炎球菌による肺炎等の今後の感染症対策に必要な予防接種に関する研究」研究班による全国調査中間報告によれば、回収率37%の時点で、重症化により入院を必要とする者は、1年間で1,363人、死亡者は5人把握されており、重症化することも少なくないことが確認されている。
      これらの入院者のうち約60%を成人が占めており、死亡者5人のうち2人は基礎疾患のない成人であった。この中には、家庭で自分の子どもから感染する事例も含まれている。水痘の好発年齢が小児期であることを考慮すると、成人の水痘は小児に比較して重症化しやすいことが示唆され、成人も含めた水痘の予防が重要である。
      小児期の水痘の予防接種を定期予防接種として高い接種率を確保すれば、成人の重症水痘を含めた水痘の予防が可能になり、我が国の感染症対策として極めて重要なことと考えられる。

  2. 水痘発症の予防により医療費の軽減が図られること
     現在、水痘を発症した場合、我が国では多くの例でアシクロビルが用いられており、水痘の治療に要する医療費は低廉とは言い難いものとなっている。
      また、医療費や定期接種に伴う費用に加えて、家族による看護の費用、ワクチン有効率、重症例、死亡例も加えて総合的に評価しても、社会的な定期接種化による便益はその費用の平均的には4倍程度と推測される。つまり、定期接種化によって費用を差し引いても社会は大きな利益を享受することが分かっている。

  3. 子育て支援として大きな意義があること
     子どもを育てた経験の少ない親への子育て支援は、小児保健の観点からも重要な課題であり、社会全体で子育てを支援するしくみづくりが急務である。幼い子どもを育てている親にとって、子どもの健康は大きな関心事で、健康的な生活を心がけ、様々な病気を予防しようと腐心する親も多い。
      また、働きながら子育てをする親にとって、子どもが感染症に罹患することにより、長期間の休業を余儀なくされることも多く、このことは社会にとっても大きな損失につながる。水痘は保育所内での流行がしばしばみられ、多くの親が仕事を休まなければならなくなっている。
      現時点では水痘の予防接種は任意接種であるにもかかわらず、接種率は30%程度あるとされている。これは、子どもを感染症から守ろうとする親たちが自ら希望して接種を受けていることの結果であり、水痘の予防接種への大きな期待がうかがわれる。
      子どもを感染症の脅威から守り、親が安心して子育てができるよう、水痘の予防接種を法に基づく定期接種とすることは、子育て支援の視点からも有用であると考えられる。
  4. 次世代の子どもを守るために重要であること
     妊娠20週以前に妊婦が水痘に罹患した場合、発生頻度は2%と低いものの、奇形を合併した子ども(先天性水痘症候群)が出生するため、一部の家族は人工妊娠中絶を希望することがある。
      また、出産間際及び直後に妊産婦が水痘に感染した場合、新生児が重篤な水痘を発症しやすいことが知られている。このような水痘の母子間感染を予防し、次世代の子ども達を水痘罹患の危険性から守るために、全ての国民に水痘の予防接種の機会を与えることが重要である。